- 2017年に神戸市が先陣を切り、公務員の副業を解禁
- 他の自治体も神戸市に続いて副業を解禁
- しかし、営利目的に副業は依然として禁止であった
- 2023年、ついに大阪府が営利目的の兼業許可を公表
- 今後は、副業の選択の幅が広がることに期待して今からできることに取り組んでおきたい
「公務員は副業禁止」という考え方はもう古いです。本業以外での知識やスキルの習得という点でも、副業は国を挙げて推進されています。
公務員も例に漏れず、公務員の副業への取り組みに対しても柔軟に対応するよう国が方針を示しているほどです。副業がすべての自治体で解禁されるまでにはもう少し時間がかかりますが、時間の問題です。
副業の全面解禁を待っていては、どんどん世間に取り残されてしまいます。この記事では、公務員の副業事情について詳しく解説しています。この記事を読むことで、公務員が副業解禁の流れのある今だからこそ取り組んでおくべきことが分かります。
公務員の副業解禁の流れは加速している
長年、公務員=副業禁止というイメージが定着していましたが、公務員の副業解禁の流れは近年加速しています。以下のとおり、従来から最近までの副業事情について解説します。
従来の副業事情
2017年に兵庫県神戸市が全国で初めて職員が職務以外での報酬を得ることを認める取り組みが始まりました。それ以前は以下の三原則により公務員の副業は制限されていました。
- 信用失墜行為の禁止
- 守秘義務
- 職務専念義務
上記の原則を拡大解釈し、長らく公務員の副業は制限されてきました。正確に言うと、「この副業なら行っても良い」という明確な許可基準が一切設けられてきませんでした。
近年の副業事情
神戸市が副業を解禁した後に、政府の「未来投資戦略2018」により公務員の副業に柔軟に対応する方針が示されました。
国家公務員については、公益的活動等を行うための兼業に関し、円滑な制度運用を図るための環境整備を進める。
上記の方針に伴い、長野県と宮崎県新富町が副業を解禁させました。
最近の副業事情
副業が解禁されたとは言え、地域・社会貢献性が重視されるという条件により、依然として選択できる副業に制限が大きい状況でした。しかし、2023年に大阪府が「営利企業従事等制限の許可(兼業)」への緩和に取り組むことを公表し2024年から実施されました。
(許可の基準)
第三条 任命権者が法第三十八条に定める許可をするときには、左に掲げる基準によるものとする。
一 職務の遂行に支障を及ぼすおそれのない場合
二 職員の職との間に特別な利害関係がなく、又は生ずるおそれのない場合
三 職員の職の信用を傷け、又は職員の職全体の不名誉となるおそれがない場合
大阪府人事委員会規則第5号「営利企業への従事等の制限に関する規則」より抜粋
これにより、以下のように営利目的の副業であっても申請の対象になり、選択の幅が広がりました。
- 行政嘱託員、部活指導員、塾講師
- 地域活動やOB会等の役員
- コンビニ等の販売員、飲食業のスタッフ
- 司会業、モデル・タレント業
- 新聞・牛乳配達・農林水産業・土木業
- 自作販売(アクセサリー、アート作品、アプリ開発)
大阪府の副業に対する許可基準の例は以下のとおりです。
- 兼業時間は週8時間以内または月30時間以内
- 勤務日の兼業は1日3時間以内
- 原則として、兼業する事業の責任者にならないこと
- 報酬が社会通念上、相当と認められる範囲を超えないこと
自治体としてコンビニや飲食店のスタッフ、自作販売の申請も想定している点が、従来の公務員の副業規制と比べてかなり先進的で画期的であると言えます。
公務員の副業が解禁されている理由
長年、禁止とされてきた公務員の副業が近年になって解禁され始めた背景には以下のようなものがあります。
公務員の人気低下への対応
国家公務員と地方公務員(大卒区分)、神奈川県(行政)におけるH29年からR6年までの公務員試験の倍率の推移は以下のとおりです。
参考:人事院「国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)」、総務省「地方公務員における働き方改革に係る状況」、神奈川県「過去の試験・選考実施結果」
全体的に倍率は減少傾向にあります。令和5年と6年の地方公務員試験の倍率は公表されていませんが、おそらく減少しているでしょう。
公務員試験の人気が低下している理由はさまざまですが、世間的に副業が推進され、新しい柔軟な働き方がトレンドになっている中で働き方への制限が未だに大きいことも一因です。
副業解禁の流れを公務員にも浸透させることで、公務員の不人気を抑制する効果が期待できます。
職員のモチベーション向上
副業を解禁する背景には、職員のモチベーション向上という目的もあるでしょう。モチベーションが低下する要因には以下が挙げられます。
- 給与に対する不満
- 仕事への充実感の欠如
- 知識やスキルが身に付かない
- 働き方の多様さがない
公務員の仕事だけを続けていても大きな昇給は望めません。公務員という定型的な業務に充実感ややりがいを感じられず、自己成長の機会を逃していると感じている若者も多いです。複数の仕事の掛け持ちやリモートワークといった多様な働き方への制限も大きいことも仕事のモチベーションが上がらない要因です。
職員のモチベーション低下による離職率の増加や受験倍率の低下を招くため、副業を解禁して選択の幅を広げようという取り組みがされています。
多様な経験やスキルの獲得
副業を通じて他の業界や分野の経験を積むことで、公務員業務に生かすことができます。例えば、以下のようなものです。
- 効率的な業務運営
- 新しい技術やトレンドの導入
- 人脈の拡大
- 柔軟な思考
- 住民サービスの向上
公務員業務では得られない経験やスキルを身に付けることで、業務の効率化や住民サービスの向上などが期待できます。副業を通じて個人のレベルが向上することは、自治体としての成長と発展にもつながるため、多様な経験やスキルを獲得する貴重な機会として副業が注目されています。
海外トレンドへの対応
アメリカやイギリス、カナダ、オーストラリアなどでは、公務員が副業を行うことは一般的に認められています。いずれも日本と同じく以下の点が重視されています。
- 利害関係を避ける
- 利益相反を避ける
- 公務に影響を与えない
上記の公務員としての条件を守った上で、自己成長や組織全体の活性化は望める副業は海外でも柔軟に推進されています。日本では伝統的な文化が重んじられ、慎重な判断が求められるとは言え、副業自体は推進される傾向にあり、今後も副業解禁に向けた議論が注目されるでしょう。
今後解禁していきそうな副業
今後、公務員で解禁されていきそうな副業は以下のとおりです。
パート勤務
これまで、コンビニや飲食店のアルバイトは営利目的という理由で副業許可が下りないというのが常識でした。しかし、2023年に大阪府が「営利企業従事等制限の許可(兼業)」への緩和に取り組むことを公表したことで、営利目的のパート勤務を副業として取り組むことに柔軟に対応する姿勢を見せています。
2024年から取り組みを開始しているため、他の自治体でも様子を見つつ参考にしながら導入が進んでいくものと思われます。
農林水産業
農林水産業は、一定の条件下で公務員の副業として認められています。農林水産業は、日本の地域活性や社会貢献につながる重要な産業だからです。
例えば、長野県では一定の条件のもと、農業を副業として認める旨を明確に示しています。一定の条件下とは以下のようなものです。
- 本業に支障をきたさないこと
- 利益相反を避けること
- 農業活動自体が適法であること
- 経営規模が大きすぎないこと
今後も農林水産業を副業とすることを明確化するガイドラインを作成する自治体は増加するものと思われます。
WEB上の制作受注
IT化が進む中で、WEB上でビジネスを行い新しい働き方をするフリーランスの人が増加しています。特にクラウドソーシングという、WEB上で仕事の発注者と受注者をマッチングするシステムが大きく普及しています。クラウドソーシングではさまざまな種類の案件がありますが、以下はその一例です。
- WEBライティング
- ブログ記事の作成
- メディアに掲載する図解や画像の作成
- 体験談、レビュー記事の執筆
- データの打ち込み作業
- アプリの開発、システム開発
大阪府が取り組んでいる兼業の内容の一部には「アプリ制作等」が含まれていることから、WEB上での制作物を納品して報酬として金銭を得る働き方も可能になっていく大きな一歩になりました。
副業解禁の流れで取り組んでおきたいこと
副業解禁の流れの今、取り組むべきことは以下の二つです。
WEBスキルを学ぶ
例えば、パート勤務は副業が許可されて時間が確保できれば誰でも始めることができます。ただし、その分時給として貴重な時間を消費します。一方、WEBスキルを習得すれば、時間と場所を選ばずに自分のペースを仕事を行うことができ、パート勤務以上の時給を達成することができます。
中にはWEBライターで月収100万円以上稼いでいるフリーランスの人もいます。
さらに、習得したスキルを生かしてフリーランスに転身したり、企業からスカウトされて好待遇で転職できる可能性も秘めています。WEBスキルを学ぶのはある程度の時間と経験が必要なので、一日でも早いうちにスキルの習得を目指すことをおすすめします。
具体的に何から始めればいいの?
一番おすすめなのはブログ運営です。ブログ運営では以下のスキルを実践しながら学ぶことができます。
- WEBライティング
- SEOライティング
- デザインスキル
- メディア運営力
- WEBマーケティング
WEB上の仕事を受注して報酬を得るための土台であるスキルを効率的に学び、習得できるという理由からブログ運営は非常に魅力的な取り組みです。
NISAで投資信託を始める
副業で得た収入は現金のまま資産にするよりも投資信託に回した方が絶対に効率的に資産形成できます。NISAによる投資信託は公務員が本業以外で資産を増やせる数少ない選択肢のひとつであり、低リスクで着実に資産を増やせる手段です。
2024年6月時点で2,428万人がNISAで資産形成を行っています。NISA口座を開設できる18歳以上の人口で考えると、およそ5人に1人がNISAで資産運用を行っているということになります。逆に言うと、8割の人はNISAで資産運用をしていません。
NISAは低リスクかつ税制面でも優遇されており、中長期的な資産形成に非常に有効な資産運用です。月に数万円の資産運用でも、利回りによっては30年後には1,000万円の利益が出ることも珍しくないため、NISAを始めない理由がないくらいです。
副業で余裕資金をNISAで資産運用する準備として今からNISAを始めることを強くおすすめします。
公務員が副業しないことのリスク
今後、副業を検討する公務員は増えると推察される一方で、副業に手を出さない公務員もいると思います。誰でも新しいことを始める一歩目のハードルは高く、実際に行動しない人がほとんどだからです。公務員が副業を一切しようとしないことには以下のリスクが存在します。
モチベーションの低下
公務員の仕事を今のまま続けていると以下の理由からモチベーションの低下を引き起こす可能性があります。
- 満足のいかない給与水準
- 貯金や資産形成ができない生活
- 上がらない生活水準
- 定年まで働き続けるしかない選択肢の狭さ
- スキルが身に付かない焦り
今の生活を続けていては上記の状況から脱出することは不可能だと思って良いです。状況を好転させるためには行動するしかありません。行動しない人には何も変化は訪れません。今の生活に少しでも不満を感じている場合は、将来的に大きなモチベーションの低下を来たすリスクがあります。
世間の流れに取り残される
副業解禁の流れで、民間企業がどんどん副業を解禁していく中で、副業の全面解禁を待ってから副業を始めようと思っていると、世間にどんどん取り残されていく可能性があります。周囲が会社に縛られずに自分のライフスタイルに合った働き方を実現していく中で、馬鹿正直に公務員一本で働いていても周囲との差はどんどん広がるばかりです。
気付いたらスキルがないまま手遅れになっているという事態も考えられます。まずは収益のことは考えず、実践的なスキルを身に付けるために副業に取り組むことで、将来の自分の選択肢を広げることができます。
老後資金の確保が困難
金融庁の算出では一人あたりの老後資金は2,000万円と言いました。しかし、発表したのは2019年です。今後さらに物価は上がり、医療費や保険料が上がり、年金受取額や退職金が減る可能性を考慮すると、今や十分とは言えません。
公務員が現金貯金だけで十分な老後資金を確保するのは相当難しいどころか、ほぼ不可能だと思っています。お金が必要なのは老後だけではありません。
- 引っ越し
- 結婚式
- 住宅の購入
- 車の購入
- 養育費、教育費、学費
- 趣味や娯楽、旅行
さまざまな場面で大きなお金が必要になるタイミングがあります。本業で得た余裕資金に加えて副業で得た資金を資産運用することで、将来的に困らない資産を築くことができます。
まとめ
長らく禁止されていた公務員の副業ですが、近年、政府の方針転換や自治体の取り組みにより、解禁の流れが加速しています。特に、大阪府が営利目的の副業を認める動きを見せ、公務員の働き方は大きく変わりつつあります。
副業を通じて多様な経験やスキルを身に付け十分な資産形成を行うことで、自分に合った働き方を見つけ、自分の理想の生き方に近付く可能性が大きく広がります。そのためには、公務員の副業解禁の流れの今だからこそ、すぐに行動に移すことが重要です。